新浦安の歯医者青木歯科の最新ニュースから虫歯予防・虫歯治療など歯に関する情報をまとめたブログ

専門知識 2020.09.18

う蝕リスクコントロールに基づいた初期う蝕のマネジメント①-う蝕とう蝕コントロールの概念-

う窩へのアプローチが主流だと思っている人
「エナメル質初期う蝕管理加算やフッ化物歯面塗布処理が導入されて、う蝕の重症化予防が評価されたみたいだけど、初期う蝕をマネジメントするにはどうしたらいいのかな?初期う蝕についての、リスク評価や診断方法、基準って何だろう?」

こういった疑問を解決します。
※当記事は、歯科学生または歯科従事者向けの内容です。

歯学部の授業では習わないため、現場でも知らない歯科医師が多い内容をお伝えしていきます。知識の糧にしていただけると幸いです。

使用した教科書・文献

当院長の所属する中野予防歯科研修会にて、会員歯科医師39名により2017年から2年間に渡り、
世界中に普及し国際的な教科書である「Dental Caries-The Disesase and its Clinical Management-(第3版)」の日本語版を作成するために翻訳勉強会を行いました。
Dental Cariesという教科書は、ヨーロッパの大学(歯学部)での虫歯の授業で一番使われている教科書でもあります。

今回は、2019年に完成した700ページを越える日本語訳の一部をさらに分かりやすく、
メンバーである景山歯科医院の景山正登先生がまとめた日本歯科評論(THE NIPPON Dental Review)2019年6月号別刷より、
う蝕リスクコントロールに基づいた初期う蝕のマネジメントについて複数回に分けてご紹介します。
<景山歯科医院の詳細はこちら>

注釈の参考文献についてはこちら

1) Baelum V, Fejerskov O : Caries diagnosis: ‘a mental resting place on the way to intervention’. In:Fejerskov O, Kidd E (eds) : Dental caries. The disease and its clinical management, 101-110, Blackwell,Oxford, 2003.
2) Nyvad B, Fejerskov O : The caries control concept. In: Fejerskov O, Nyvad B, Kidd E (eds): Dental caries. The disease and its clinical management, 3rd edn, 235-243, Wiley Blackwell, Oxford, 2015.
3) Backer Dirks O : Posteruptive changes in dental enamel. J Dent Res, 45(3) : 503-511, 1966.
4) Nyvad B, Machiulskiene V, Baelum V : Reliability of new caries diagnostic system differentiating between active and inactive caries lesions. Caries Res, 33 : 252-260, 1999.

-う蝕とう蝕コントロールの概念-

「う蝕」とは,歯面上のプラーク・バイオフィルムの中で起こる動的なプロセス(すなわち,脱灰と再石灰化)において,歯の基質と周囲のプラーク・バイオフィルムとの間の平衡関係が妨げられた状態で時間が経過し,最終的に歯の表面から石灰化物質の喪失が生じることである 1)。
したがって,歯は代謝活性のあるバイオフィルムに曝露され続けるので,う蝕の発症および進行を防ぐためにう蝕のマネジメントは生涯にわたり行わなければならない.これが「う蝕コントロール」の概念である 2)(図1)。

1 う蝕コントロール概念の概略図(文献2)をもとに中の予防歯科研修会・神澤 晃先生が作成)

う蝕コントロールには,切削介入を行わない「非保存修復治療」(本稿ではう蝕リスクコントロールとも記す)と切削介入する「保存修復治療」がある.
従来はう蝕の進行が早く,う窩になってから発見されることが多かったため,診療室における二次予防は早期に病変を発見し速やかに切削介入する保存修復治療に重点がおかれていた。
しかし,う蝕コントロールの概念からすると,保存修復治療がう蝕の進行を伴う活動性う蝕病変のある患者に対して提供される唯一の治療であってはならない,と考えるべきである。

では,う蝕コントロールの概念による非保存修復治療とはどのようなものであろうか。
う蝕病変の中で白斑病変(すなわち初期う蝕病変)は,すべてがう窩に進行するのではなく,進行が停止または健全歯面に回復することが報告されている 3)(図2)。

図2 上顎第一大臼歯頬側面の変化(8歲時と15歳時の比較(文献3)より)
15歳の時,6の受動萌出,7の萌出により歯肉辺縁の変化:プラーク堆積部位の変化,咀嚼により病変停止

したがって,う窩形成前の病変は脱灰環境から再石灰化が優位になる環境になれば,健全歯質に改善する可能性がある。
そのため,う触を早期に発見したら,ただちに切削介入する早期発見・早期治療ではなく,リスクを改善するために再石灰化が優位になるよう環境を整え維持し,その環境が保護されているかどうかを定期的に観察し必要に応じた手段を講じる「早期発見保護管理」が求められる。
これが非保存修復治療,すなわちう蝕リスクコントロールである。

なお,う蝕およびう窩が存在する場合,保存修復治療が必要なのか,それとも非保存修復治療で対応するのかを判断しなければならない。
う窩が存在しない限り1回の検査だけで保存修復治療を行うべきか否かを判断するのは困難である。
また,う蝕が存在したとしても,そのう蝕が進行するかどうかすなわち“活動性う蝕か非活動性う蝕か”を確認するために経過を追う必要がある.
したがって,う蝕を診断するうえで確認しなければならないことは,う窩の有無と活動性病変か否かである 4)。

う蝕の診断;
・う窩の有無
・活動性病変か否か

次回,『Dental Caries』を参照しながら景山Dr.の考察を含めて述べていく。