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2020.09.18

う蝕リスクコントロールに基づいた初期う蝕のマネジメント②-う蝕リスクコントロールを行うために必要な評価-

う蝕リスクコントロールに基づいた初期う蝕のマネジメント②-う蝕リスクコントロールを行うために必要な評価-

<景山歯科医院>の景山正登先生がまとめた日本歯科評論(THE NIPPON Dental Review)2019年6月号別刷より、
う蝕リスクコントロールに基づいた初期う蝕のマネジメントについて、前回からの続きです。

前回までの記事はこちら

注釈の参考文献についてはこちら

5)景山正登 : 臨床の行方 いまこそ大切にすべきもの-リスクを評価し,そのリスクをコントロールする.日本歯科評論, 76(9) : 8-9, 2016.
6) Ekstrand KR, Martignon S : Visual- tactile detection and assessment. Caries management- science and clinical practice. Meyer-Lueckel H, Paris S. Ekstrand KR ed, 69-85, Thieme, Stuttgart, 2013.
7) Fejerskov O, Kidd E, Nyvad B, Baelum V : Defining the disease: an introduction. In: Fejerskov O, Kidd E (eds) : Dental caries, The disease and its clinical management, 2nd edn, 3-6, Blackwell, Oxford, 2003.

-う蝕リスクコントロールを行うために必要な評価-

「リスク」とは将来,疾病や健康障害が発生する危険性を示すもので,疾病の状態を表してはいない.そのため,リスクがあるからといって発病するとは限らない.
リスクは目に見えづらく,不確実なものである.
しかし,う蝕の発症を考えた場合,突然う窩ができるのではなく,う触のリスクを持つ個人が脱灰環境へ歯を曝露し続けることで,そのような状態になったといえる.
う触が発症しても,う窩にならないようにするためには,リスクコントロールが不可欠である.
また,治療後もリスクコントロールを怠れば,再発する可能性がある5).

う蝕リスクコントロールに先立ち,「う蝕活動性評価」と「う蝕リスク評価」を行う.
う蝕活動性評価は,主にう蝕病変とその周囲の視診-触診からの情報を考慮し,う蝕病変が進行するかどうかを確認する“歯と部位”を対象にした評価である.
一方,う触りスク評価は,個人の徴候を考慮に入れて行われる“患者個人を対象にした評価である6).

う蝕活動性評価とう蝕リスク評価

上顎第一大臼歯頬側面の変化
図3 う蝕の過程に影響を及ぼす要因(文献7)より)

う触のプロセス(過程)に影響を及ぼす要因(図3)を考慮し,現時点のう独活動性と将来のう蝕進行のリスクを評価する7).
すなわち,

  1. 臨床う蝕検査である視診と触診により,現存する病変の現在のう独活動性の状況および予後の情報を確認することで,病変の活動性評価を行う(「予後の情報」については後述,<【病変活動性(Nyvadの基準)の予後予測】の項>を参照).
    過去2~3年で観察された新しい病変,進行した病変,または充填された病変の数も考慮する.
  2. 医科既往歴(唾液分泌低下を起こす疾患・薬剤・治療など)と歯科既往歴(DMFT,食事そして口腔衛生などの生活習慣)により,個人の将来におけるう蝕進行の可能性のあるリスクファクターを確認する(<図5【検査】>を参照).
    という2つの評価である.

次に,臨床う蝕検査や医科と歯科の既往歴に基づいて分類を行う.